お気楽☆建築士の住宅問答 blog

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4寸角(12cm角)の柱の話

我が家の柱は全て4寸角(12cm角)です!! だからとても強くて丈夫な家ですね?

専門家の私を含めて多くの方が4寸柱に幻想を持っています。これは経験上からくる物なのだろうと思いますが少々現状では学問的では無いようです。

経験上と言ったのは、例えば立派な旧家の柱がとても太い事や建物の隅柱に4寸角以上の通し柱を使っているといった知識から来ているのでしょう。

実際に立派な旧家の差鴨居などで拘束された柱は地震の水平力に抵抗する事ができるのですが、現在の基準(耐力壁で地震に抵抗する考え方のタイプの場合)では垂壁等の剛性にもよりますが5寸角(15cm角)程度の寸法がないと震度6強程度の地震では柱が曲げられ座屈して折れてしまう事が実験で確認されています。また、建物の隅柱の通し柱は複数の方向から梁が差し込まれる為に断面欠損が大きく曲げには余り強くありません。(管柱よりは強いとは思いますが・・・)

さらに、現行の在来工法の木造住宅での耐震・耐力壁考え方は、柱と柱の間に筋交いを渡してトラスを形成したり合板を貼って幅90cmの壁柱を作ってしまうようなものなので水平力を負担しない弱軸方向の厚み=柱の太さはあまり耐震性に関係がありません。

ちなみにこれは柱の寸法が5寸角になっても6寸角になっても同じ事です。(あまり太いと乾燥収縮で寸法精度が狂う場合も・・・)

4寸柱(12cm角)が一般的な3.5寸(10.5cm角)柱より確実に強いのは鉛直荷重による座屈(=重みで折れる)についてですが、この鉛直方向の柱の性能は、もともと3.5寸柱でも一般的な住宅程度の重さであればかなり余裕があり、よほどの重たい屋根の建物や豪雪地帯でもない限り、または、柱の配置に無理がある間取り(極端に柱が少ない間取とか)にしない限り問題はないといえます。

結局のところ建物の強さ、丈夫さといった事は総合的に判断する事です、一般に「こうすれば強くなる」と言われている事のひとつひとつは専門家から見ると「有利な方向には働く可能性が大きいが、しかし過大に評価出来るものでは無い。」という物がほとんどです。これらの事を合理的に組み合わせ欠点を取り除く事(つまり設計を行う事)で結果として丈夫な家が出来上がります。


「我が家の柱は全て4寸角(12cm角)にするつもりです!! だからとても強くて丈夫な家ですね?」

「柱の太さだけで建物の強さを語る事には無理を感じるけど、土台や梁幅も4寸にするなどして部材寸法を揃えると施工精度も上がるだろうし、4寸にした事で建物が弱くなる訳でもないし、材料の増加分の費用もさほど高くは無い訳だから予算に余裕があれば4寸柱で検討しても良いと思うよ。」

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【外部リンク】地震対策と耐震補強(在来木造編)